[ 6-918 ] 沖つ島荒磯の玉藻潮干満ちてい隠りゆかば思ほえむかも
[ 6-919 ] 若の浦に潮満ち来れば潟を無み葦辺をさして鶴鳴き渡る
[ 7-1215] 玉津島よく見ていませあをによし平城なる人の待ち問はばいかに
[ 7-1216] 潮満たばいかにせむとか方便海の神が手わたる海未通女ども
[ 7-1217] 玉津島見てし善けくもわれは無し都に行きて恋ひまく思へば
[ 7-1219] 和歌の浦に白波立ちて沖つ風寒き暮は倭し思ほゆ
[ 7-1222] 玉津島見れども飽かずいかにして包み持ち行かむ見ぬ人のため
[ 9-1799] 玉津島磯の浦廻の真砂にもにほひて行かな妹が触れけむ
[12-3168] 衣手の真若の浦の真砂子地間無く時無しわが恋ふらくは
[12-3175] 若の浦に袖さへ濡れて忘れ貝拾へど妹は忘らえなくに
[6-917] 山部赤人 やすみしし わご大君の 常宮と 仕へまつれる 雑賀野ゆ 背向に見ゆる 沖つ島 清き渚に 風吹けば 白波騒き 潮干れば 玉藻刈りつつ 神代より 然そ尊き 玉津島山 やすみしし わごおほきみの とこみやと つかへまつれる さひかのゆ そがひにみゆる おきつしま きよきなぎさに かぜふけば しらなみさわき しほふれば たまもかりつつ かみよより しかそたふとき たまつしまやま 訳:八方を治めなさるわが天皇の永遠の宮として、この宮にお仕えする 雑賀野からうしろに見える沖の島、その清らかな渚には 風が吹くと白波が騒ぎ、潮が引くと美しい藻を刈りつつ、 神代からこのように貴いことよ。玉津島山は。
[6-918] 山部赤人 沖つ島 荒磯の玉藻 潮干満ちて い隠りゆかば 思ほえむかも おきつしま ありそのたまも しほひみちて いかくりゆかば おもほえむかも 訳:沖の島の荒磯にはえる美しい藻は、 潮干がやがて波満ちて 隠れていったなら、しのばれてならないだろうよ。
[6-919] 山部赤人 若の浦に 潮満ち来れば 潟を無み 葦辺をさして 鶴鳴き渡る わかのうらに しほみちくれば かたをなみ あしへをさして たづなきわたる 訳:和歌の浦に潮が満ちて来ると 潟が無くなるので、 葦のほとりを目ざして鶴が鳴き渡ることよ。
[7-1215] 作者未詳 玉津島 よく見ていませ あをによし 平城なる人の 待ち問はばいかに たまつしま よくみていませ あをによし ならなるひとの まちとはばいかに 訳:玉津島をよく見ていらっしゃい。 青丹美しい 奈良の都の人が待っていて聞いたならどうお答えになりますか。
[7-1216] 作者未詳 潮満たば いかにせむとか 方便海の 神が手わたる 海未通女ども しほみたば いかにせむとか わたつみの かみがてわたる あまをとめども 訳:満潮になったらどうするつもりで 海神の手のような岩礁をわたっているのか。 漁師の娘たちよ。
[7-1217] 作者未詳 玉津島 見てし善けくも われは無し 都に行きて 恋ひまく思へば たまつしま みてしよけくも われはなし みやこにゆきて こひまくおもへば 訳:せっかくの玉津島を見たことも 私にはよくはない。 都に戻って恋しく思われるだろうことを考えると。
[7-1219] 藤原卿 和歌の浦に 白波立ちて 沖つ風 寒き暮は 倭し思ほゆ わかのうらに しらなみたちて おきつかぜ さむきゆふべは やまとしおもほゆ 訳:和歌の浦に白波が立ち 沖からの風が 寒々と吹く夕方は、大和のことがおもわれるよ。
[7-1222] 藤原卿 玉津島 見れども飽かず いかにして 包み持ち行かむ 見ぬ人のため たまつしま みれどもあかず いかにして つつみもちゆかむ みぬひとのため 訳:玉津島を見ても飽きない。 これほどの景色を どのようにして包んで持ち帰ったらよいのだろう。 見ない人のために。
[9-1799] 柿本人麿集 玉津島 磯の浦廻の 真砂にも にほひて行かな 妹が触れけむ たまつしま いそのうらみの まなごにも にほひてゆかな いもがふれけむ 訳:玉津島の岩の多い浦の砂にも色どられていこうよ。 いとしい妻が手に触れたことだろう。
[12-3168] 作者未詳 衣手の 真若の浦の 真砂子地 間無く時無し わが恋ふらくは ころもでの まわかのうらの まなごつち まなくときなし わがこふらくは 訳:衣の袖の真若の浦の 真砂子の土、 間なく時も定めない。わが恋の苦しさは。
[12-3175] 作者未詳 若の浦に 袖さへ濡れて 忘れ貝 拾へど妹は 忘らえなくに わかのうらに そでさへぬれて わすれがひ ひりへどいもは わすらえなくに 訳:若の浦で袖まで濡らして 忘れ貝を拾うが、 妻はわすれられないことよ。